若返りだって? 本当ですか?

200歳まで生きます。

13_「そんなものこんなもの」 お父さんの願い 4/4


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 パンパンは、それから、みんなにうるさいじいさんだと言われました。 あれが悪いとかこれが悪い、こうしろ、ああしろと、何にでも口を出し、わかってくれるまで毎日来るからです。



 それから、パンパンは何回も死にかけましたが、閻魔大王の天秤計りは、 何回行っても地獄行きの方が下がるため、そのたびにまた生き返りました。



 パンパンは、三百歳まで生きて、ある日死にかけたとき、やっと閻魔大王の天秤計りが、極楽行きの方へ、カタンと傾きました。パンパンは、閻魔大王の前で「やれやれ」とため息をつきました。


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 そのとき、天秤計りの付け根の所から、一匹のヤモリがぽたりと床に落ちました。バランスをくずした天秤計りは、「ガーン」と音を立てて止まりました。



 パンパンが、まばたきをした一瞬の間に、そのヤモリは、やさしそうなおじいさんになりました。



 閻魔大王が、その人に向かって頭を下げていますから、よっぽどえらい人に違いありません。



そのおじいさんは、本当は神様だったのです。


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神様は言いました。



「 パンパンさん、長い間つらい目に合わせてすまなかった。
でも、あなたのようにうるさい人がいないと、お金の力に負けて
生きる人ばかりになってしまうのです。



 今度は私が人間に生まれ変わって、もう一度世の中を 作り直してみようと思います。でも、人間のあかちゃんから始まるので、
何十年もかかるし、うまくできないこともあります。



 あなたには、私の代わりに、人間の生死を支配する役目を やってもらいたいと思います。私がうまく仕事ができるように、
役に立つ人は、もう一度人間の世界に送り返してください。」




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 パンパンは、神様の役目を引き受けたその日に、一度死んだリュウリュウを貧しい家の赤ちゃんにしました。



 その次の日、その家の近くの牛小屋のわらの上で、 赤ちゃんの泣き声が聞こえました。



 もう寝る所もなくなった、結婚していないい貧しい女の人から 女のあかちゃんが生まれたのです。



この子があの神様の生まれ変わりです。



 パンパンは、すぐにおいしい物を食べすぎて死にそうになった役人に、「地獄に行きたくなかったら、やっと生きている人達を助けなさい」 「生き返ったら、すぐに牛小屋に行って、かわいそうな女を助けるのだ」



 そう言って、右足と左手を動かなくする罰を与えてから生き返らせました。


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 二人の子供は、貧しくても親がいなくても、 他の人から大事にされて大きくなり、 同じ学校に通い、仲の良い友達になりました。



 これまで、パンパン爺さんがうるさかったおかげで、 誰でもりっぱな先生から立派な教育を受けることができたのです。



 歴史の教科書に、「そんな物」や「こんな物」を作った人と、
それを「そんな物やこんな物を使ったらだめだ」と誰も言わないで、国をだめにしたという記録がありました。



「こんな間違いはしたらいけないなあ」 二人は、いっしょになって、りっぱに国作りをしようと思いました。


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 でも、二人は大きくなって、政治家になったわけでも、有名な人になったわけでもありません。



 「物が豊かで心が狭い生き方よりも、質素な生活でも豊かな心で生きなさい」と先生に教えられた通りに生きていっただけでした。



 でも、知らないうちに、みんなが、「自分で、何が大事かを判断できて、その通りに実行できる勇気」 を身に付けていたのです。



 神様になったパンパンは、「うまくやったもんだ」と大変喜んで、 ある日、お酒をいっぱい飲みました。



 そして地獄で永遠に苦しんでいる人たちをかわいそうになって、みんなをイワシやニシンにして、北海道の海に放り込みました。


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 でも、たくさん魚を獲ってお金を儲けた漁師達が心を迷わせ、
その魚を売った人がお金を儲けて心を狂わせ、たくさんの人の心を次々に迷わせて行くために、 パンパンは怖くなり、魚になって死んで帰って来た人は、また全部地獄に返してやりました。 



だから、もう二度と海が魚でいっぱいになることはないのです。


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 パンパンは、前の神様と同じように、別の人と、神様を交代してもらいました。 そして、たった今、日本で一番かわいそうな女の人の赤ちゃんとして生まれました。



その子供は、きっと、将来世界のために役立つ、立派な人になることでしょう。



おしまい。